ある男女がひょんなことをきっかけにして出会い、最初は顔を合わせる度にいがみ合っていたが、徐々に誤解が解けて気になる存在になり、気がつけばお互い好きになっていた…。
これは恋愛ドラマの王道パターンです。
「そんなうまい話あるかよ」と思いたくなりますが、心理学的にはあり得る話です。
その理由の一つとして挙げられるのが、「人は何度も顔を合わせていると、相手のことがだんだん好きなる」という心理を持っていることです。
単純接触効果(ザイオンス効果)とは
アメリカの心理学者ロバート・ザイアンスは以下のような実験を行いました。
被験者たちに「これは記憶の実験です」と伝えて、成人男性のスライド写真を見せます。2秒ごとに86枚の写真を次々と見せていく方式です。
写真は86枚ですが86人の男性の写真ではなく、実は12人の男性の写真を繰り返しランダムに見せました。
写真を見せ終わった後に、どの男性に魅力を感じたかアンケートを取ったところ、
ルックスの良し悪しには関係なく、写真を見せた回数の多かった男性が、少なかった男性よりも好感度が高いという結果になりました。
別の実験では、女性に対してさきほどと同じようにランダムに写真を見せたところ、
1度しか登場しなかった男性よりも、25回登場した男性の方が好感度が4倍も高いことが分かっています。
ピッツバーグ大学のリチャード教授も異なる方法で同じ目的の実験を行っています。
容姿に差がない4人の女性にお願いして、大学の講義に一学期の間、出席してもらいました。約200人の学生が受講している講義です。
ただし、出席回数は4人とも異なっています。
女性Aは15回、女性Bは10回、女性Cは5回、女性Dは0回です。
そして一学期が終了した後、約200人の学生たちに4人の女性の写真を見せて、それぞれどのくら魅力を感じるのかアンケート調査をしました。
結果は、15回出席してい女性Aが一番人気で、2番目は女性B、3番目は女性C、最下位は一度も出席していない女性Dでした。
女性たちと学生たちには交流がなく、ただ講義で顔を合わせていただけの関係でしたが、接触回数が多かった女性は好感度が上がっていたのです。
これはザイオンス効果、単純接触効果などと呼ばれていて、人間は何度も観たことのある人や風景などに対して親しみを覚える性質を持っています。
学校で進級時のクラス替えがあったときに、新しいクラスに仲の良い友達がいて嬉しかった・安心したと感じた経験はありませんか?
人はよく知っている人や物に接することで安心するという心理があります(熟知性の原則)。
親しみを感じるには必ずしも話したことがなくてもいいのです。ただ見たことがある、視界に入るというだけでも好感度は上がります。
話したことはほとんどないけど、毎日会っているうちにだんだん気になる存在になったという恋話もよくありますね。毎朝同じ時刻の電車で顔を合わせる人が気になる、いつも行くお店の店員さんが気になるなんて話もよく聞きますね。
単純接触効果を利用した実例は他にもたくさんあります。
選挙
選挙が始まると候補者が街頭車に乗って街中を何度も周回したり、駅前で毎日のように挨拶するのは単純接触効果を狙ったものです。
最初はうるさいなと感じていても、毎日見ているうちに慣れてきて、気づかぬうちに親しみを覚えていくのです。
一度も会ったこともない人に投票するより、少しは親しみのある人に一票を入れようと思うわけです。
マーケティング
営業マンが雑談だけして帰ることもよくありますよね。商売の話は一切せずに、友達のように近況報告などをするだけで終わってしまう。
あれも実は単純接触効果を狙ったもので、営業マン自身の好感度を上げているのです。
お客さんが営業マンに親しみを感じるようになったところで、初めてビジネスの話をするわけですね。
メルマガにも同様の効果があります。
よく無料のメルマガがありますが、意外と生活に役立つ情報をくれたりします。
「でも、なんで無料でこんなサービスをしているのかな?」と思ったことがありませんか?
実はお客さんと定期的に接触することで、メルマガ発行者(企業や商品)への親しみを感じてもらうことを狙っているんですね。
ブランドイメージの向上や広告活動の一環として活動しているわけです。
広告
テレビCMも同じです。
視聴者に繰り返し見せることで、商品やサービスに親しみを感じ、利用してもらいやすくなります。いつの間にかCM曲を口ずさんでいる人もよくいますよね。心の奥まで慣れ親しんでいる証拠です。
また、テレビCMに出演しているタレントさんにとっても好感度を上げる効果が非常に高いです。タレントさんたちが「テレビCMに出たい出たい」とよく言う理由は、単純にギャラが高いというだけではなく、好感度を著しく上昇させることができるためなんです。
出産・子育てなどでしばらく芸能活動を休業していても、テレビCMが流れ続けていると視聴者は仕事をしていないことに気づかず、好感度も下がりません。育休後もすんなりと仕事復帰できます。休業中も化粧品のCMなどによく出ていた松嶋菜々子さんはそのパターンです。
近所の犬
近所によく吠える犬がいて、犬が元気に吠えているうちはうるさいなと思っていても、犬が亡くなってしまったら吠える声が聞こえなくなって寂しく感じることがあります。これも単純接触効果によるものです。
毎日声を聞くうちに犬に親しみを感じていたのです。
近くにいた人やペットがいなくなって初めて自分の気持ちに気づくということもよくありますね。
単純接触効果を恋愛に応用するにはコツがある
この話を聞いて、「そうか!!毎日会えば好きになってもらえるんだ!!」と考えて、ただしつこく会いに行くだけでは逆に嫌われてしまいます。そんなことをしたらストーカーだと言われて通報されます(笑)
会うだけで恋愛感情にまで発展するということはさすがにないです。職場や学校で同じ部屋にいる人たちがみんな恋愛しているなんてことはありえませんよね。
では、恋愛においてはどう使えばうまくいくのかと言うと、
会うたびに恋愛対象としての魅力を織り交ぜることが重要です。
会話の中で毎回必ず相手を楽しませる・笑わせる、細やかな気配りをみせる、頼りがいのある一面をみせるなど、毎回会うたびに異性としての魅力となる刺激を伝えるのです。
すると、単純接触効果によって好感度や親しみが上がるのと同時に、恋愛感情も徐々に芽生えていきます。
単純接触効果は10回~20回くらいの接触がもっとも効果が高いというボーンスタイン氏の研究報告もありますので、
赤の他人で一度も話したことのない相手ならそのくらいを目処にして話しかけてみたり、話したことのある相手ならデートに誘ってみたりすると良いかもしれません。
ザイオンス効果の注意点
この法則にはひとつだけ注意が必要なことがあります。
それは「接触する期間が空いてしまうと、だんだん好感度や親しみもなくなっていく」という点です。
例えば、就職や進学などで遠距離恋愛になると、お互いの心の距離まで離れてしまうことが多いのは、接触回数が減ることが大きな要因です。
何年間もまったく連絡を取らなくなった昔の友達に対して、昔と同じような仲間意識を持っている人は少ないでしょう。親近感や好感度が知らず知らずのうちに下がってしまっているんです。
これを防ぐためには、定期的に連絡を取り合うことが重要です。
毎日会うことは難しくても、メールや電話などのちょっとしたコミュニケーションでも効果はあります。
「マメな男はモテる」とよく言われますが、それは科学的にも真実です。
マメな男は、単純接触効果(ザイアンスの法則)をうまく利用しています。さらに気配りのできる優しさや褒めテクニックなどを駆使することで女性を惚れさせているのです。
「あいつはマメだからモテる」と人に言われるような男性たちは、ただ単にマメな性格だとか生まれつきの個性ではなく、実は恋愛テクニックとして深く理解した上で身につけている男性が多いです。
彼氏、彼女にしたいと思っている異性がいたら、まずはできるだけ顔を合わせる回数を増やすことから始めてみるのも良いですね。
たまには偶然を装うと、さらに効果的です。
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