あなたは他人から褒められたときに、どう反応しますか?
「そんなに嬉しいお言葉を頂き、ありがとうございます。」と素直に受け取るでしょうか?
それとも、
「いやいや、そんなことないですよ。」と謙遜するでしょうか?
この記事で紹介する心理テクニックは、後者の謙遜する人に効果絶大です。
相手の自尊心をくすぐって、自分に好感を持ってもらう心理テクニックです。
なぜ人は謙遜するのか、まずはその心理から解説します。
謙遜する人の心理
理想的な謙遜
日本の文化では謙虚であることが美徳とされていますよね。
すごい偉業を達成したスポーツ選手がインタビューなどで見せる謙遜な姿勢からは美しさを感じます。
私が見習いたいなと思うのは王貞治さん。
王さんが福岡ソフトバンクホークスの監督を務めていた2006年。
WBCで日本代表監督を兼務し、イチロー選手らと共に見事にWBC初優勝国の栄冠を勝ち取りました。
王監督は優勝インタビューで興奮しながらも以下のように答えています。
日本の野球を最高の形でアピールできたことを嬉しく思っています。
テレビの前のみなさん、たくさんの方々の応援に後押しされて、今日この金メダルを胸にかけることができました。
みなさんに心から御礼を申し上げます。
成し遂げた偉業に誇りを持ちつつも、自分の功績にはまったく触れず、協力してくれた人々への感謝のみを伝えています。
揺るぎない自信を感じさせる一方で、自慢の欠片も見せない言葉選びは見事。
用意周到に準備したコメントというよりは、王さんの高い品格から自然に生まれた言葉だと思います。
過度に謙遜してしまう人
王さんのように自然な形で謙虚な姿勢を見せられれば最高なのですが、
ある心理が働いて「過度に謙遜してしまう人」も多くいます。
・自尊心が低いために謙遜しすぎしまう人
自分のことをいつも卑下しているために、過度に謙遜している人がいます。
褒められてもそれを否定する思考回路が出来上がっているんですね。
褒め言葉をもらってもすぐには信用せずに否定し、悩んだ様子で自分を卑下します。
褒められたくないわけではないんです。それを素直に受け入れる心の準備ができてないんですね。
このタイプの人は話す様子にいつも自信がなく、表情も暗いために、マイナスな印象を持たれることがあります。
・承認欲求が強すぎる人
他人から自分の存在を認められたい、褒められたいと強く願っている人も過度に謙遜することがあります。
このタイプの人は他人に嫌われることを恐れています。
嫌われたくないため、ドヤ顔を見せないように謙遜したり、謙遜して相手に「そんなことないですよ」と言わせてさらに褒められようとします。
・不幸自慢をする人
やたら不幸自慢をする人がいますよね。謙遜を通り越して、自信ありげに不幸話を語る人です。
「子供の頃はご飯も食べれないくらい貧しかった」
「両親が早くに離婚して、お金がなかったので学校に行けず、中学から働いていた」
「病気で何年間も苦しんでいた」
このような苦労話を「お前らより私は不幸をたくさん経験してきた」というような態度で話す人がいますよね。
これは優越コンプレックスと言って、他人よりも不幸であるということで自分は特別な存在であるという優越感に浸っている状態です。
不良が「今までどれだけ悪いことをしてきたかを自慢する」のも同じ心理です。
不幸自慢も悪事自慢も「どんな方法でもいいから特別な存在でいたい。他人から一目置かれたい」と思っている人たちです。
・自己防衛のために謙遜する人
自己防衛のために謙遜する人もいます。妬まれないようにするためですね。
非常に優秀な人や、社会的に成功した人に多いです。
たとえば、
生まれつき飛び抜けて頭が良い人は、小さい頃から多くの嫉妬にさらされることがあります。
同級生からの嫉妬、兄弟からの嫉妬、友達の親からの嫉妬、学校の先生からの嫉妬など。
育った環境(人間関係)が悪いと、才能を潰そうとされたり、存在を否定されるような酷い扱いを受けることもあります。
そのような悪い環境で育ってしまった頭の良い子供は、他人の嫉妬から自分を守るために「謙遜することを自己防衛の手段」として身につけます。
そして謙遜の行きつく先は「信頼する人以外の前では無口になる」ことです。
自分の知性がバレないように、本音を隠すようになります。
社会的に成功した人や容姿が美しい人も、激しい嫉妬にさらされるので、
自分を守るために過度に謙遜してしまうことがあります。
綺麗な女優さんが「綺麗ですね。可愛いですね。」と言われて過度に謙遜しているのを見ると、ちょっと気の毒になりますね。
謙遜すると嫌われてしまうことも
本来、謙遜の目的は「他人から嫌われないため」「他人から好かれるため」に行うものです。
つまり「謙遜する=他人に好かれたい」というシグナルなんですね。
しかし、謙遜することで、逆に嫌われてしまうこともあります。
謙遜が嫌味に取られてしまうんですね。
たとえば、
お金持ちの人が「ウチなんてそんなにお金ないですよ~」と謙遜するつもりで言ってしまうと、
「どう見てもお金持ちじゃん。何を隠すことがあるの?」と思われます。
美しい人が「私なんてぜんぜん綺麗じゃないですから。」と謙遜するつもりで言ってしまうと、
「あなたが綺麗じゃないなら、私は何なの?どういうつもりで言ってるの?」と思われます。
高学歴の人が「旧帝大なんて勉強すれば誰でも入れますから」と自分は特別じゃないという意味で言ったつもりでも、
「勉強しても入れない奴だっているんだよ。感じ悪いなこいつ」と思われます。
このように言葉選びを間違えると、
嫌われないために謙遜したのに、かえって嫌われてしまうことがあります。
謙虚な姿勢は美徳ですが、謙虚な姿勢の見せ方を知らないと嫌な奴だと思われてしまいます。
上手な謙遜のしかた
謙遜するときに一番大切なことは「相手の褒め言葉を否定しない」ことです。
否定されると反感を持つのが人間の心理です。
たとえば、綺麗ですねと言われたら「ありがとうございます」と素直に受けて、まずは相手の意見に賛同しましょう。
謙遜するならその後に言葉を付け加えます。できれば誰かに感謝するのが良いですね。
「小さい頃に両親が高い治療費を出して歯の矯正をしてくれたので、歯並びや顔のバランスがマシになったかもしれません。私の将来のことを考えてくれた両親には本当に感謝しています。」
このように長所を自分の手柄にしないことで、自慢や嫌味がなくなります。
頭が良いですねと言われたら
「昔は勉強を頑張ってたんですけどね。最近は物忘れがひどくて、この前も電車の中でカバンを忘れてしまって大変なことに…」と、途中から失敗エピソードにしてしまうのも、ひとつの方法です。
高等テクニックになりますが「あえて相手の話に過度に乗っかり、笑いに変える」という方法もあります。
「あなたは高収入で羨ましいです」と言われたら、
「そうなんですよ!!福の神に愛され過ぎてて困ってます(笑)」と冗談として乗っかるわけです。
ただこれは難しくて、場を選びます。
会話の雰囲気が明るい、相手が洒落の分かる人、自分はいつも人に奢っていてケチだと思われてないなど、他の条件がそろっていないと使えません。
「笑い」って実はすごく難しいコミュニケーション技術で、
TPOを選ぶのは当然のことですし、言う相手を選びます。
「ダジャレを言う人を見下す人」「下ネタを言う人を嫌悪する人」「ブラックジョークが分からない人」などさまざまなので、誰にでも同じ手法が使えるとは限りません。
笑いは間違えて使うと嫌われてしまう諸刃の剣のようなものです。注意しましょう。
謙遜の基本は、相手の言葉を否定したり、事実を否定しないこと。
事実は事実として認めないと嫌味になってしまいます。
そして褒められたことを自分の手柄にしないことです。
「○○のおかげで今あなたに褒められています」と伝えることを意識しましょう。
褒めれば人の心は動かせる
ここからは褒め方のお話です。
人どうしのコミュニケーションで褒めることは非常に大きな力になってくれます。
世の中に褒められて嫌な気分になる人はいません。
褒められてるのに相手の言葉の裏を読んで猜疑心を持つ人はたまにいますが、それは褒め方が下手なだけ。
猜疑心を持たせないように褒めることがポイントです。
普段から他人を褒めていない人は、言葉の表現が嘘臭くなってしまったり、変なタイミングや間の取り方で褒めたりするので、「こいつゴマすっているだけじゃないか?」と疑われてしまいます。
ですから、普段から他人を褒める癖をつけて慣れておくのも重要ですね。
褒め上手としてよく知られているのは、ヘンリー・フォードです。
アメリカの自動車会社フォード・モーターの創設者で、彼は自動車の普及に革命をもたらしたT型フォードの生みの親として知られていますが、実は技術に関しては素人だったと言われています。
彼は部下の技術者たちをとにかく褒めまくり、部下たちはモチベーションを高く保ったまま開発に力を注ぎ、画期的な自動車の生産・開発に成功したのです。
自動車の普及はヘンリー・フォードの褒める力が産んだ大成果と言えます。
なぜ人は褒められると喜ぶのでしょうか?
それを説明したのは豪州のクイーンズランド大学のマシュー・ホーンシー博士です。
彼は「人間は誰でも、自分は他人より正直で賢く面白い、と思いたがる傾向がある」ことを証明しました。
これを優位性バイアスと呼び、自分が他人よりも劣っていると本気で信じている人はほとんどいないと考えました。
褒め被せれば効果が倍増!!
優位性バイアスは常に心で発動しています。
しかし「自分が他人より優秀だという気持ちを肯定してくれる言葉」をかけてもらえることは滅多にありません。
つまり、心は褒められることに飢えているのです。
引用:井上雄彦『スラムダンク』
ですから、その承認欲求を満たしてあげるように褒めてあげましょう。
すると途端に心が反応して、喜びのホルモンが脳内に充満します。
この女性の返答は見せかけです。謙遜です。本心では思わぬ褒め言葉に動揺し、大喜びしています。動揺と喜びの混ざった不器用な笑顔になっているはずです。
ここで間髪入れずに再否定(褒め被せ)をするのがポイントです。
女性は嬉しさと、男性から好意を持たれていることに気づいて、とても喜んでくれます。
女性に限らず男性でも、友達でも、親でも誰でも構いません。褒めて、否定されたら、それを再否定することで喜びが倍増します。
それと同時にこちらに好意も抱いてくれるのです。心がいつも求めていた褒め言葉をくれた「良い人」という認識を持ってくれるのです。
ただし、いつも褒められている人は褒められていることにあまり飢えていません。
例えばファッションモデルのように綺麗な人は毎日のように「綺麗だね」「美しいね」「カッコいいね」「羨ましい」と外見を褒められているので、外見に関しては褒められることに慣れています。
ノーベル賞を受賞したような学者も同じですね。毎日のように「○○先生はこの分野の権威」「素晴らしい研究成果はどうすれば残せるのですか」「先生には敵いません」などと頭の良さ、業績の偉大さを毎日のように言われます。そんな言葉をかけられても、「こいつもまた同じことを言うのか」と思われるだけでしょう。
こういう人たちを褒める場合には、誰もが褒めそうなところを指摘しても効果はほとんどありません。逆に知性や繊細さがない人だと思われることもあるでしょう。
一番効果的なのは、本人が気づいていない長所を見つけてあげて褒めることです。
これはジョハリの盲点の窓と呼ばれていて、特に大きな心の揺さぶりを起こします。
もちろん否定されたら、間髪入れずに再否定です。
詳しくはこちらの記事に書いていますので、参考にしてみてください。
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